俺はこの頃、田舎で暮らす少年だった。

田んぼの用水路で釣り上げたナマズを祖母に焼いてもらいウマウマ言っているような少年だった。
畦道に生えているセリやノビルを引き抜いてきては祖母に料理してもらいウマウマ言っているような少年だった。
稲穂を縫って飛び跳ねるイナゴを取り集めては祖母に提出するも食べはしない少年だった。

ロバート・プラントでさえ卒倒しそうなハイトーンで高らかに歌い上げる『大都会』とは東京という実在の都市であることなんて想像も出来なかった。
大都会。
東京で働いて、東京で遊ぶ。
果てしない夢はあったのか?
大空は駆け巡ることは叶ったのか?

否。
俺は薄汚れただけだ。
それでも俺はこの都会としか生きていけないんだろう。